要約
2026年3月、イランによるカタールのラスラファンLNG施設への攻撃で、世界の輸出能力の約17%が3〜5年間にわたり喪失する見通しとなった。この混乱に乗じ、米国は欧州に対し、7500億ドル規模の「ターンベリー貿易協定」への署名を要求。応じなければ米国産LNGの供給を制限すると示唆した。欧州はロシア産ガス遮断後、カタールへの依存を強めていたが、今回の事態で米国産LNGへの依存度が最大80%に達する懸念が浮上。これは偶発的な戦禍ではなく、北米のLNG輸出拡大計画とイスラエル・エジプトを経由する東地中海ガス回廊の構築を軸とした、米国の戦略的支配の完成形である。
背景情報
* 北米の供給能力増強: 米エネルギー情報局(EIA)は、北米の液化能力を2024年の11.4bcf/dから2029年には28.7bcf/dへ引き上げる計画を以前から推進していた。
* 欧州の脆弱性: ロシア産ガスからの脱却後、欧州はカタール産LNGに依存しており、ホルムズ海峡の緊張やラスラファン施設の損壊は、欧州市場に直撃する構造となっていた。
* 東地中海回廊の整備: 2022年、EU・イスラエル・エジプト間でガス輸出に関する覚書が締結され、イスラエル等のガスを欧州へ供給する枠組みが既に構築されていた。
今後の影響
* 欧州のエネルギー主権の喪失
* 米国産LNGへの依存度が最大80%に達することで、欧州のエネルギー政策が米国の外交・通商戦略に強く拘束される。
* エネルギー供給網の再編
* カタールや湾岸諸国の影響力が低下し、米国およびイスラエル・エジプト連携による「東地中海ガス回廊」が欧州の主要なエネルギー供給源として定着する。
* 価格高騰と経済的圧力
* 供給源の限定により、欧州の消費者や産業界は、米国の政治的意向や市場のボラティリティに左右される高コストなエネルギー調達を余儀なくされる。
